31人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
あれが汲み取る想いは『ランダム』なんだ。距離も強さも関係ない。思い通りに動かせないんじゃ意味が無い。偉大なる指導者を戻そうと思ったら、近所の婆さんでしたってんじゃ仕方ない。百年間祈り続ければ、そのうち当たりを引くかもしれんがね。どっちにしろ、確実な即効性が無いんじゃ、ガラクタさ」
青年は、はあと気の抜けたような返事をした。
「次に――あれが戻すのは、『人間』じゃあない」
「……は?」
「コピー。影。まあ呼び名は何でもいい。ともかく『連中』は人間ではない」
青年は困惑した顔になった。
「人間ではない? それを銃で撃って殺せるんですか?」
「ああ。血も流れているし、臓器の位置も同じだ。体温も脈も人のそれだから、確認するのも簡単だ。ただし、思考するから、ぼうっとしたうちに撃たんと、隠れられて面倒な事になるな」
「そ、それは――人間じゃないですか!」
青年は拳を握ると、立ち上がって叫んでいた。
老人は口の端を上げる。
「ほう……連中は飯を食わんのにか?」
「は?」
「水も飲まん。成長もせんぞ」
「そ……それは――」
老人は煙草を取り出すと、咥えた。
「連中は時間が止まってるのさ。『在りし日の思い出』がノコノコ歩いてくるわけだよ。恐ろしいと思わんか? 虚しいと思わんか?」
黙ったままの青年を睨みながら、老人はマッチを壁面に擦りつけた。瞬間、お互いの顔が、そして表情がはっきりと見える。
青年は悟った。
この人とは相容れない、と。
最初のコメントを投稿しよう!