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 ぼうっとした頭を振り、青年は目を瞬かせた。  体をブルりと震わす。  防寒用の装備で身を固めていても、寒さが体に染みてくる。  青年は辺りを見回した。  暗い。夜だろうか。  持っていたライトで辺りを照らすが、足元にはゴツゴツとした岩しかない。目を上にやれば、青黒く、切り立った崖がどこまでも続いている。  青年は歩を進めた。  そうだ――僕は――多分迷って、別の道に出てしまったのだ。  だが、目的地の見張り台は、ここから見てもすぐ判るほど大きく目立つ。だから、目指していけば、いずれ着くだろう。  足元に注意しながら進むと、地面が裂けている場所が現れた。  黒々とした割れ目は、広かった。遥か向こうの対岸を眺め、青年は恐る恐る裂け目を覗きこむ。周囲の崖と同じく、何の手がかりもない岩肌が、ぐっと垂直に落ち込んでいる。  だが、遥か下に何かがある。  青年は四つん這いになると、目を凝らした。  真っ黒い裂け目の奥に、様々な色の花が咲いている――青年は最初にそう錯覚した。  しかし、強い風が吹き付けて来た時に、それが誤りであることが判った。ひらひらとそれらが舞ったからだ。  服だった。     
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