1/8
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

 老人は銃を撃ち始めた。青年は呆然と、見張り台から外を見続けた。  人々は続々と歩いてきた。  老若男女、様々な職種、様々な人種が歩いてきた。  老人は壁にあるスイッチを入れる。どこか壁の奥深くで、ガチリと音がして、途端に見張り台の下の方から、銃撃音が響き始める。次々と頭や腹を撃たれ、声もなく吹き飛んでいく人々。  青年はそれを見続けた。 「な、なんで、こんなに――いつも、こんな風なんですか?」 「そんわけが無いだろう」  ぱすっぱすっと気の抜けたような音と、薬莢が転がる音、それに火薬の臭いが見張り台に溢れる。ふっと下からの銃撃音が止んだ。 「くそっ、下の銃座の弾が切れたな。おい、新兵、お前ちょっと行ってこい」 「ど、どうして僕が?」 「お前しかいないからだよ。自動装填は五分かかる。連中はまだまだ歩いてきやがるからな」  青年は外を見る。  次々と塵になっていく前を歩く者を気にする事もなく、人々は続々と歩いてきた。 「……あの人達は、どうして――」     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!