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後
老人は銃を撃ち始めた。青年は呆然と、見張り台から外を見続けた。
人々は続々と歩いてきた。
老若男女、様々な職種、様々な人種が歩いてきた。
老人は壁にあるスイッチを入れる。どこか壁の奥深くで、ガチリと音がして、途端に見張り台の下の方から、銃撃音が響き始める。次々と頭や腹を撃たれ、声もなく吹き飛んでいく人々。
青年はそれを見続けた。
「な、なんで、こんなに――いつも、こんな風なんですか?」
「そんわけが無いだろう」
ぱすっぱすっと気の抜けたような音と、薬莢が転がる音、それに火薬の臭いが見張り台に溢れる。ふっと下からの銃撃音が止んだ。
「くそっ、下の銃座の弾が切れたな。おい、新兵、お前ちょっと行ってこい」
「ど、どうして僕が?」
「お前しかいないからだよ。自動装填は五分かかる。連中はまだまだ歩いてきやがるからな」
青年は外を見る。
次々と塵になっていく前を歩く者を気にする事もなく、人々は続々と歩いてきた。
「……あの人達は、どうして――」
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