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志望校に合格すると、ほぼ持ち上がりだった小中学校とは違い、周りの顔ぶれががらりと変わる。特に違うのは、周りに男子がいないことだ。
なぜって、女子校だから。
学ランの子はどこにもいなくて、生徒たちはみんなひらひらとスカートを翻している。周りに男子がいないためか、女子らしくあろうとする女子はあまりいない。
そうは言っても、女の子は女の子。みんな、甘いものに目がない。
あそこのカフェで新作が出た、あのコンビニスイーツに新しい味が出た。そんな、甘いものについての話題が途切れる日がなかった。
その日の帰り、私と友だちはたい焼き屋さんに寄った。私が買ったのは、オーソドックスなあんこのたい焼きだった。
「王道を行くねえ」
新作のたい焼きを買った友だちが、上唇をチョコで汚しながら言った。友だちのたい焼きは、生地までカカオの黒い色をしていた。
「チョコ、家にあるから。いいかなあって……」
「家のを我慢すればよかったんじゃない?」
「そうかもね」
友だちの提案を適当に受け流す。あのチョコを食べるのはもはやルーチンだから、食べないという選択肢はないのだけれど。もし、たい焼きを食べていたなら、胸焼けしてでもチョコも食べていたろうなと思う。そう思うと、どっと後悔が押し寄せてきた。
そうだ、どうせ私はあのチョコを食べるんだ。それなら、たい焼きも新作を買ってしまえばよかったなあ。
「今度こそは、頼んでみようかな」
「うーん。それじゃ、今日は試食してみる? これ」
「いいの!?」
「その代わり、あんこの一口ちょうだい!」
お互いのたい焼きを、一口ずつ分け合う。次こそチョコのたい焼きを食べよう。そんな気持ちが固くなった。
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