いいこと十二個

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 志望校に合格すると、ほぼ持ち上がりだった小中学校とは違い、周りの顔ぶれががらりと変わる。特に違うのは、周りに男子がいないことだ。  なぜって、女子校だから。  学ランの子はどこにもいなくて、生徒たちはみんなひらひらとスカートを翻している。周りに男子がいないためか、女子らしくあろうとする女子はあまりいない。  そうは言っても、女の子は女の子。みんな、甘いものに目がない。  あそこのカフェで新作が出た、あのコンビニスイーツに新しい味が出た。そんな、甘いものについての話題が途切れる日がなかった。  その日の帰り、私と友だちはたい焼き屋さんに寄った。私が買ったのは、オーソドックスなあんこのたい焼きだった。 「王道を行くねえ」  新作のたい焼きを買った友だちが、上唇をチョコで汚しながら言った。友だちのたい焼きは、生地までカカオの黒い色をしていた。 「チョコ、家にあるから。いいかなあって……」 「家のを我慢すればよかったんじゃない?」 「そうかもね」  友だちの提案を適当に受け流す。あのチョコを食べるのはもはやルーチンだから、食べないという選択肢はないのだけれど。もし、たい焼きを食べていたなら、胸焼けしてでもチョコも食べていたろうなと思う。そう思うと、どっと後悔が押し寄せてきた。  そうだ、どうせ私はあのチョコを食べるんだ。それなら、たい焼きも新作を買ってしまえばよかったなあ。 「今度こそは、頼んでみようかな」 「うーん。それじゃ、今日は試食してみる? これ」 「いいの!?」 「その代わり、あんこの一口ちょうだい!」  お互いのたい焼きを、一口ずつ分け合う。次こそチョコのたい焼きを食べよう。そんな気持ちが固くなった。
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