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三年生のとき、好きな男の子ができた。私はバレンタインの日に、いつも買っているチョコレートを箱ごと男の子にあげた。男の子は、快く受け取ってくれたけど。
「手作りじゃないんだ」
同級生の女の子は、私が彼にチョコをあげたことを知って苦笑いした。女の子は、お姉さんぶるのが好きな子だった。
「手作りのが、愛があるよねえ」
馬鹿にしたように笑った。
手作りって、愛があるかな? 私は首を傾げた。
私はチョコが好きだから、手作りチョコの"まずさ"を知っている。溶かして固めたチョコは、白いのが出て全然綺麗じゃない。美味しくもない。
だから、私は、私の一番好きなチョコをそのままあげた。
このころ買っていた自分用のチョコは、ビターチョコだった。ビターと言っても苦みはほんのちょっとだ。ちゃんと甘さがある。
だけど、その日のチョコは、いつもより苦く感じた。
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