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それでも結局、そのときの男の子とはつきあうことになって、週末には近所の公園やショッピングセンターで遊んだ。
駆け回って、手を繋いで、ゲームセンターで遊んで。
そうして、ときどきキスをした。
四年生の夏。お菓子屋を見ていたあるとき、彼が言った。
「そのチョコ、好きなの?」
私は、いつものチョコの箱を握っていた。買い足ししなくていいくらいに余っていたけれど、好きなものが置いてあるとなんとなく手に取ってしまう性分だった。
「すごく好き」
「どうして?」
「ひとくちサイズで食べやすいの。『いいこと』食べてるみたいで、元気になる」
ああ、あのCMの。彼は得心したように言う。そこで会話が一度とぎれて、少し間が空いた。彼が、別なチョコの箱を手に取る。
それは、木の枝をモチーフにした、チョコのお菓子の箱だった。期間限定のチョコミント味だ。
「僕は、これが好きかなあ」
「それも美味しいよね。爽やかな味が好きなの?」
「うん。歯磨き粉とか言うやつも、いるけどさ」
「あれ、失礼だよね」
他愛ない話をして、他愛ない時間が過ぎる。心地よい時間だった。
彼とはその年の冬ごろに別れた。何が原因だったかは思い出せない。何となく少しずつ遊ぶ時間がなくなって、何となく、縁が切れた。
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