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六年生の卒業式。その年の桜は早咲きで、ちらほらと花の咲いた枝が見られた。
私の学校の卒業式では、中学の制服を着るのが慣例だった。制服を身につけた私たちは、普段よりずっと大人に見えた。
先生たちの長い話を聞いて、『仰げば尊し』と、校歌を歌って、拍手の中退場する。
小学生という子どもの時間が終わることに寂しさを感じながら、これから一歩大人になるんだ、と胸の高鳴りと不安を覚えた。
家に帰って、私服に着替える。お夕飯のあとに、チョコレートをひとつ食べた。
いつもの味。いつもの甘さ。それだけのことに、理由もなく、安心した。
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