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容疑者、不在につき【問題篇】
フリーターの青年が何者かに刺殺された事件で、私は花菱警部補とともに容疑者である田代誠司の自宅を訪れた。インターホンを鳴らすと、しばらくしてからパジャマ姿の女性が戸口に出た。
「田代誠司さんのお宅ですか。八木柊吾という男性が殺害された事件で、誠司さんにお話をうかがいたいのですが」
花菱警部補の警察手帳を、女性は戸惑いの表情で見やる。
「誠司はいません。県外で就職してそのまま向こうに。今ここには私しか住んでいないんです」
田代夫人は私たちを家の中に招き入れた。薄暗い玄関には、かかとを踏み潰した男もののシューズが並んでいる。
「息子が殺人事件に関わっているのですか」
流しの蛇口をひねりポットに水を入れながら、夫人は訊ねる。手際よく湯を沸かし、二人分のコーヒーを用意してくれた彼女に私は別の質問を浴びせた。
「あの、夫人は今起きたばかりなのですよね。チャイムの音で目が覚めたのですか」
「ええ」怪訝な顔をする夫人を、私はじっと見つめる。
「嘘はよくないな。あなたが息子さんを庇ったところで、警察の目は誤魔化せない。誠司くんは二階にでも隠れているのではないですか」
Q:「私」が、田代誠司が家の中にいると推理した理由は?
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