一通の封筒

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「石田、次のクライアントは何時からだっけ!?」 「14時からです!」 今日は会社の先輩と営業で外回りをしていた。 朝からいろんなクライアントを回って、両手には菓子折りを持ち、バタバタとビジネス街を駆け回っていた。 「ちょっとさすがに疲れたな。」 「はい。今日は休憩もろくに取れなさそうですよね・・・」 「次は14時からか。今は13時過ぎ・・・ 次のクライアントはここから近いし、少しそこのカフェで休憩するか。」 僕たちは、とりあえず今一番近くに見えたカフェに入ることにした。 しかしここのカフェはこの界隈で1番と言っていいぐらいの人気店で、お昼時ということもありすごく混んでいた。 「とりあえず入ったけど、やっぱりめっちゃ並んでんな~。」 そうですよねーと先輩に答えようと思ったとき、急に誰かに腕をつかまれた。  ̄ ̄ ̄ ̄ 「石田さん!石田さんやんね!! 」 「!?」 「来てくれてありがとう~!私、日本秘密調査課の平田です!待っててよかった~。」 腕をつかんできたのはスーツを来た30代ぐらいの女の人だった。 急に腕をつかまれたものだから僕もどうしていいのか慌てていたら女の人の携帯が鳴った。 「はいはい、うんうん!あーそうなん?!今から戻るん?分かったー。」 「えっと・・・」 「ごめんねー!ちょっと戻らへんとあかんくなって、せっかく来てもらったのに申し訳ないんやけど、これ!調査課の住所!待ってますのでよろしくねー!」 半ば強引に僕の右手を取りねじ込むように名刺を握らされ、じゃあねー!と言ってお店から去っていった。 あまりにも唐突な出来事に僕は呆然と立ち尽くしてしまっていた。
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