重力を活用せよ！

その日は日曜日であったため、町は多くの人で賑わっていたのだ。“その瞬間”まで一時間を切っていたが、多くの人はいつもとさほど変わら無い様子で日曜日の午後を過ごしていたのだ。しかし、男は違っていた。家で一人ソファーに座ってビールを飲みながらテレビの特番を見ていた。
それは丁度一ヶ月前の事だった。国際宇宙研究機関が今日の事を予測し、発表したのだ。だが、具体的な対処法や対策などは誰も分かるはずも無く、なす術なくこの日を迎えたのだった。国際宇宙研究機関は間も無く来るその瞬間の為に生中継を行なっていた。予定時刻の十二時間も前から全ての放送局を通じて同じ放送をしていた。しかし、多くの星民は対処法も無く、解決策も無いのにただただ長々と注意喚起を促すだけの生放送を続ける国際宇宙研究機関に怒り、国際宇宙研究機関には避難と抗議の電話が殺到していた。男も相当イライラしていたが、ビールを飲んで紛らわしているのであった。
いよいよその時はすぐそこまで迫っていた。テレビも緊張感を増して放送を続けているが、残念な事に視聴率は五%にも満たなかった。