とある日の博士とほむ

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とある日の博士とほむ

『ばれんたいんでー、ですか?』 『うん、私のいた場所での……お祭り、イベント? まあそんなのよ』 『博士の、故郷の』  いつかある日、そんな雑談があった。  ベッドで横たわる幼い少女と、その少女に博士と呼ばれる、中学生ほどの背丈の少女。 『ざっくり言うと女の子が好きな人にチョコレートを渡す日でね。まあ愛とか恋とかそういう物理的にも甘々で、そして渡す相手も友達もいない私にはミリも関係ない日だったわ』  ”博士”はベッドのふちに腰掛け、錬金術大全などど、胡散臭いタイトルの本から目を離し、横たわる――自らが作り出した――少女の診察を続けつつ語る。 『ちゃこらーと』 『チョコレート、よ。えーと、黒くて、ちょっと硬くてぱきって感じで、甘いお菓子、って言っても、あなたじゃ”甘い”も分かんないよなー、味覚の設定うまくいってないもんなぁ』 『……?』 『あはは、気にしないで』  ”博士”は診察内容を紙に写し、軽く伸びをする。  ちょうど視線のその先に、壁にかかっているカレンダーがあった。 『こっちじゃ数え方とか色々違うけど……時期的に言うなら二月の十四日は――』
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