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変な匂いと騒がしい声で僕は目が覚めた。
「あれ……?」
ここはどこだろう。
大きい部屋には机と本だけが置いてある。ドアは無くて、代わりに思わず穴を開けたくなるくらい綺麗に貼られた障子。畳からは懐かしい匂いがするのにその畳の匂いを消そうとするみたいに、何かが焦げる匂いと騒がしい声が聞こえる。それでも僕はなぜか怖いとは思わなかった。僕はこの初めて来たはずの場所を知っている気がしたんだ。
急に襖が開いて男の人が入ってくる。さっきの男の人かな……ううん、あれは……
「僕……?」
すごく僕に似ているけれど、その人は大人っぽくて身長も高かった。
その後、慌てたようにもう1人の男の人が入ってくる。さっきの男の人だ。でも2人は僕に気づかず、喧嘩をしているみたいだった。
『殿! 敵陣がもうすぐこの本殿に……!』
『分かっている! お前はすぐにこの城の外へ逃げろ!』
『しかし……!』
『我の言うことが聞けんのか! 早く行け!』
『………………承知致しました。では殿、これを。』
『これは?』
『この鈴が必ず、殿の御命を守るこ とでしょう』
『……あぁ。そうか。では有難く貰っておこう』
「あの鈴……」
2人が言っていたことは僕には難しくてあまり分からなかったけれど、あの男の人が持っていた鈴は僕がランドセルに付けている鈴と同じだっていうことは分かった。
男の人が去った後、“殿”って呼ばれた人は鈴を見て嬉しそうな顔をした。その鈴を袖の所に入れると急いで部屋から出ていった。
その時、また鈴の音が聞こえた。
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