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また目を覚ますとさっきの男の人が心配そうな顔で僕の顔を見ていた。いつの間にか公園の椅子に僕たちはいた。
「よかった! 意識が戻られたのですね!」
「おにいさん……? 僕、おにいさんのこと知ってる気がする」
「……! 覚えていただけていたとは。ありがたき幸せ。」
「おにいさん、名前はなんて言うの? なんで僕に逢いに来たの? 」
少し困った顔をして、おにいさんはこう言った。
「名乗るほどの者ではございませんが、ずっと昔に貴方様が私を助けてくださったのです。だから恩返しをするために逢いに来ました。」
「恩返し? でもこの鈴はおにいさんがくれたんだよね?」
「はい、まだ持っていていただけたのですね」
嬉しそうに笑うおにいさんの顔は、さっき夢で見た“殿”っていう人の嬉しそうな顔に似ていた。
「じゃあ僕もおにいさんにお返ししたいな」
「そ、そんな……! 滅相もないことでございます!」
おにいさんは首が取れるんじゃないかっていうくらい横に振った。
「これ、僕の好きなお菓子。美味しいんだよ」
僕が取り出したお菓子を見ておにいさんは優しく笑って
「貴方様の好きなものは貴方様が召し上がってください」
と言った。
「僕からのお返し、受け取ってくれないの?」
ちょっと悲しくなって僕は下を向いた。
「…………承知致しました。全く……いつになっても貴方様には敵わない。」
困ったように笑うおにいさんと一緒に僕はお菓子を食べた。
最後までおにいさんが誰なのかは分からなかったけど、僕はもう、おにいさんを怪しい人とは思わなかった
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