喝っ!

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私は、もともと感の強い方で、たまに見える質では あった。 妹の彼氏が、私の部屋で、恨めしそうに立っている のを見た時には、ドキリとした。 「あなたは…死んだんだよ。」 そう、私が言うと、彼は私をギョロリと睨み、 私の机の引き出しを指差した。 「…駄目。それは、渡せない。」 彼が何を言わんとしているのか察し、私は彼に ハッキリと拒絶の意思を示す。 その瞬間。 ガタ!ガタガタガタ!! 空気が震え、窓が鳴る。 「っっ!!」 『彼女に…これをを。お返し…お返しししぃ!  ああぁぁぁ!!』 ガタッガタン!! 鍵のかかっている筈の引き出しが開き、彼から 妹へのプレゼントが姿を表す。 「駄目よっ!!」 私はそれを掴み、彼と対峙する。 『うぅぅぅ!』 彼は己の起こしたポルターガイストで少し力を使い すぎたのだろう。 彼の身体が未練を残しながら霧散する。 でも、私は直感する。 彼は、また来る。 私は覚悟を決めて、急いでカバンに荷物をまとめた。 次の日の早朝。 「お姉ちゃん、どこか…行くの?」 不安そうに聞く妹に、私は努めて笑顔を返す。 「大丈夫。すぐ帰ってくるから。」 最近では私も妹もバイトを始めて家計を支えている 影響もあり、父も以前よりは時間を作ることが 出来るようになっていた。 だから、まだ精神的に不安定な妹を父に託し、行き 先を伝えず私は家を出た。 私の行き先は、霊験あらたかな霊山。 私はあらゆるツテを使って、霊山にいる僧に教えを こいに修行へ旅立つ事にしたのだ。 妹は私と違って、霊感の類は無い方だし、彼の プレゼントは私とともにある。 私が少し離れていても、とりあえず妹はしばらくは 大丈夫だろう。 師である僧は、妹の彼氏を無理やり除霊するのは したくないという。 おそらく、このプレゼントを妹に渡しさえすれば、 彼は満足して成仏するだろう、とも。 だけど私は、このプレゼントを渡しても妹は大丈夫 だと安心出来る時まで、妹を守るために、力を求め た。 修行はそれはそれは大変な物だった。 ある時には冷たい滝に打たれ、またある時には冷たく 尖った岩の上で片腕一本で逆立ちし…手から出る波動 で木をなぎ倒し…。 それはそれは大変だった。 そして、私は遂に力を手に入れたのだ!
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