2  ― Tukumogami side ―

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「じゃあ、またな」  二人が、別れの挨拶をしている。拓哉が住む、学生用の賃貸マンションに着いたのだ。  夕食の時間には、まだ微妙に早い。帰り着いたら、拓哉はすぐにバレンタインのチョコを食べるだろうか?  これだけの数のチョコがあれば、佳代子のチョコは後の方になるかもしれない。ただ、俺は紙袋の中では上の方に置かれている。順番的には、かなり先だろうか。  ごめん、佳代子。  あれだけ自信たっぷりに、心配するなってお前に言ったのにな。お前が頑張ってる姿も、俺はずっと陰ながら見てきたのに。  ……いや、打つ手はある。付喪神としての最後の意地だ。  拓哉がエレベーターを降りて、自分の部屋があるフロアに立った。  もし家に帰り着いてすぐに食べ始めたりしたら、もう時間がない。  俺は、心の中で佳代子に詫びながら、急いだ。  気持ちは焦るが、なかなか進まない。  拓哉が、玄関のドアを開ける。  まだ終わらない。  意識が徐々に遠のき始めた。  もう外の様子は分からない。周囲の音も徐々に聞こえなくなってくる。  体が不意に、ふわっと浮く。拓哉が俺を手に取ったのだ。  ――くそっ。意識が朦朧とする。 「あれ? チョコだと思ったら、空だ」  拍子抜けした声がした。 「……イタズラだったのかな」  違う。そうじゃない。  頼む。気づいてくれ。 「あ!」  意識が途絶えようとする中、驚く拓哉の声が聞こえる。それに続いて、拓哉の手により、俺は糊付けされた隅までバラバラに解体された。
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