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私、峰元佳代子は、自宅のキッチンで一年ぶりに”旧友”に再会した。
三年前に初めて会って、これで三回目の再会となる。
「いよいよ活躍してもらう日が来たわね」
私は深く息を吸うと、自分にも言い聞かせるように呟いた。
思えば、苦悩と葛藤、そしてわずかな希望が現れては消えていく、そんな日々だった。
来月には、大学の卒業式が控えている。大きな人生の節目を前にして、私は最後のチャンスに賭けようとしていた。
両腕を棚の中に入れて、奥の方でそっと包むように掴む。
出てきたのは、シックな水玉模様がデザインされた紙製のボックスだ。まだ、お店で買った時のままになっており、透明な袋に入ったままとなっている。
一見すると単なる箱なのだが、私が“旧友”とまで呼ぶのには、理由があった。
三年前に買って以来、ずっと大事にとっておいたので、見た目は購入した時と変わりがない。――いや、『とっておいた』という表現は、正確ではなかった。
ただ、使えずにいたのだ。
相手は、ずっと同じ人。その人に、箱にチョコを入れて手渡すだけ。それが三年越しの願いとなってしまっていた。
「今年こそ、頑張らなきゃね」
日時は二月の十四日。時刻は、ちょうど午前十時。
お菓子作りは苦手だが、今から作れば相手と約束している午後三時には間に合うだろう。
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