1   ― Kayoko side ―

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 まだ頭が事態をのみこめず、混乱していた。ただ、それでも私には一つだけ絶対に見逃せないことがあった。 「チョコ作る前に、また新しいパッケージ買ってこなきゃ……」  神様だか何だか分からないような箱に、チョコを入れて渡すなど、相手からしたら嫌がらせ以外の何物でもない。  ただでさえ、お菓子作りは苦手で時間がかかりそうなのに、出だしからとんでもないトラブルになってしまった。 「おい、どこに行くんだ?」  財布を持って家を出ようとすると、後ろから九十九神が呼び止めてきた。 「俺を使えば良いだろ。心配するな、絶対に上手くいくようにしてやるから」 「……どうやって?」  にわかに信じがたい――どころか、全く信用できない。 「いいか? お前、今年こそバレンタインでチョコを渡したいんだろ? 恋愛に限ったことじゃないが、こういうのは相手のことをよく分かった上で、行動することが大切なんだよ。闇雲に、何でもいいから、やれば良いってもんじゃない」  物凄い上から目線のコメントだったが、いかんせん見た目が単なる箱なので、分不相応な説教にしか聞こえない。
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