2  ― Tukumogami side ―

1/5
前へ
/13ページ
次へ

2  ― Tukumogami side ―

 佳代子が、一つずつ丁寧に、冷蔵庫で冷やされたチョコを俺の中に入れていく。  手つきに人柄や気持ちが出ている。あわてん坊で抜けていることもあるが、一途で真面目なやつだった。  三年前のバレンタインに、佳代子が売れ残りだった俺を買っていった。店の中を何十分もウロウロと歩き回って、迷いに迷って、検討に検討を重ねた末に俺を選んだ。  一回目のバレンタインは、他の大勢いるライバルに遠慮と物怖じした挙句、何もせずに終わった。  翌年の二回目は、当日の夕方前までかかってチョコを作り上げたが、試食して味に全く自信がなくなり、結局諦めた。  三回目は、同じゼミになったと喜んでいたが、相手と会う手はずが整えることができずに、チョコは作ったものの俺を使うこともなく終わった。  そして、今年が四回目だった。  佳代子が、俺にワインレッドのリボンをかける。 「ふふっ。可愛くしてあげるね」  輪の大きさを調節させながら、バランスよく結んでいた。  最後に、ハードカバー本より少し大きい程度の白い紙袋に入れられて、終わりとなる。 「準備万端だな」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加