2  ― Tukumogami side ―

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 通学用に使っているリュックを、佳代子が背負う。  二回、玄関のドアに鍵をかけたか確認をしてから、家を出た。  佳代子は、紙袋であるにも関わらず、紐の部分は持たずに全体を両手で持って運んでいる。おかげで、中はほとんど揺れない。 「心配するな。最後まで俺がついているから、大船に乗ったつもりでいろよ」  下から見上げると、表情を少し硬くしたまま小さく頷いていた。  向かう先は、佳代子が住んでいるマンションから徒歩圏内にある大学だ。  総合大学なのだが、ほとんどの学部はここの広いキャンパスに集まっている。  平日なので、大学内では行き交う学生も多い。  待ち合わせ場所は、ゼミが入っている七号館だ。相手の拓哉は、バイト先から直接くるはずだった。  エレベーターで、四階まで上る。  講義が行われている校舎は学生たちの姿も多いが、ここは人の姿はほとんどない。  佳代子がリュックから、書類が入ったクリアファイルを取り出す。ゼミの教授から拓哉に渡すように預かったもので、棚からぼた餅といった体で、今回のチョコを渡す口実になった。  佳代子がリュックを背負いなおしているところで、こちらに向かって廊下を駆け寄ってくる姿があった。 「わざわざ、ごめんね!」  すらりとした長身で、身のこなしも軽い。これが拓哉だった。
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