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【サンプル】泥舟に乗って
古びた安アパートに着いた。
二階に上がって、突き当たりの自分の部屋へと歩いていたら、その俺の部屋のドアが開いた。
出てくるのはもちろん……アイツしかいない。
鍵をかけてこっちを振り返ったマサキは、さすがにビックリしてる。俺もリョウに何て言ったらいいのか脳みそフル回転で考える。兄貴、だとでも言っておくか……?さすがに年離れ過ぎか、なんて忙しく働いてた俺の頭は、リョウの一言で機能停止した。
「課長?!」
終わった。
バレた。
リョウはマサキの部下だった。
「えっ、えっ?課長がミヤビの部屋から……???」
パニクるリョウに固まる俺。
マサキだけは冷静だった。
「椚田、悪いが何も聞かずに今日のところは帰ってくれないか。頼む」
口調こそ丁寧で淡々としていたけど、上からすんごい圧かけてきてる。リョウも何か言いたそうだったけど、
「……わかりました」
と答えて、俺の方にまたな、と言って今来た道を戻ってった。
「……」
「……」
部屋に入ったものの。
マサキも俺も何にも言わない。
俺、怒られてる?
怒られることした?
友達と映画行っただけだけども。
その友達が家に寄ろうとしただけだけども。
「あの……マサキ?」
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