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震えていることだけが生きている証となった子猫を抱きかかえ、アヤは急いで車に乗った。
深夜でも開いている動物病院へ駆け込み、事なきを得て、アヤは心の底から安堵した。
動物とはいえ、今知り合ったばかりとはいえ、また命が消えゆくのを見たくなかった。旅立ちを見送るのはもうごめんだった。
綺麗に洗ってもらい、目薬や点滴を処置してもらい、見違えるような姿になった子猫。
「飼い主さん?」
「いえ」
「どうします?面倒見てあげますか?」
少しの躊躇ののち、数分後アヤは子猫と車に乗っていた。
にゃあにゃあとよく鳴いている。元気になった証拠だと微笑ましくその姿を眺める。
「とはいえ、何もないんだ。ごめんな、明日になればいろいろ買いに行けるんだけど」
取り急ぎ帰りに寄ったコンビニで買ったレトルトのキャットフードを与えてみると、よく食べてくれた。
トイレもベッドも何もなく、考えなしに連れ帰ったことは間違いだったかと迷いが生じた。が、アヤのあぐらの上に当たり前のように猫が乗ってきて、すっぽり収まり丸くなって眠り始めたものだから、そんな迷いはすぐに消えた。
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