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医師たちが出てきたのは、もう夜明けも近い頃だった。
長時間の極限状態で精神的に疲労困憊、泣き続けた目は真っ赤に腫れ上がり、朦朧としているリョウの目の前を何人もの医師や看護師が通り過ぎて行った。
リョウは医師に話しかける気力もなかった。
アヤが運ばれた病室には面会謝絶の札が下がり、まだ会うことができない。
リョウは酷い有様のまま、出勤した。
意識はあるのか。
後遺症はないのか。
病室に運ばれたってことは、生きてるんよな。
リョウは毎日病院に通い詰めた。昼休みに退社後、土日は終日入り浸った。
一週間ほどして、ようやく意識が戻ったと医師から言われたが、面会謝絶の札が依然侵入を阻む。
リョウは次第に
『今日もどうせ会えないんだろう』
と思いながら、半ば惰性にも似た気持ちで病院へ通うようになっていた。
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