君だけが消えた理由(記憶喪失)

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「長かったですね。もう会えますよ」  なので、看護師からそう言われた時は、一瞬なんのことかわからなかったほど。 ようやく言葉の意味を理解して、病室に恐る恐る一歩踏み入れる。 まだ包帯でぐるぐる巻きにされた恋人が、確かにそこにいた。 リョウの気配にチラ、と目だけ向けるアヤ。まだ思うように体が動かないのか。 すぐに目を逸らし、元の視線に戻る。 「アヤ……」  掠れた声で呼んでみる。またチラ、とこっちを見た。だけだった。 リョウはベッドに近づいた。 頭にものものしく包帯を巻かれ、腕や脚にはギブス。痛々しいことこの上ないアヤが、じっとリョウを見つめている。  話せるようになったら言ってやりたかった。 助ける必要なんかなかったのに、身代わりになんてなって欲しくなかったのに、余計なことして。 だけどアヤを目の前にしたら、全部吹き飛んでしまった。 「アヤ……アヤ、ごめんな……俺のせいで……っ」  ギブスをしていないほうの手を握りしめる。 「とにかく、無事でよかった……!」  その、握り慣れた手の、確かな温もりに、涙が後から後から流れ出る。 が、そんな涙も次の瞬間ぴたりと止まってしまった。 「……失礼ですが?」  涙とともにリョウの動きも止まった。 「も、もう、怒ってる?んでそんな嫌がらせしてるん?シャレにならんよ……」  歪んだ笑顔を作りながら精一杯取り繕うも 「どちら様ですか」  握った手を振りほどかれ、不審さを露わにした冷たい瞳で見つめられ、リョウは呆然とした。
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