1章

10/34
302人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
バタリと大きな音を立ててドアを閉めた。そして、そのまま玄関に座り込む。 「やらかした」 「はいはい、御愁傷様。そこ邪魔だからもうちょい奥行ってくれない?」 「逢坂が冷たい……反抗期かしら……」 ヨヨヨと芝居がかった泣き真似をしていると、大きなため息をつかれた。 「文句言ってるけど、九割は結太のせいだろ」 「何でだよ! あいつが絡んでくるのが悪い!」 そう噛みつくように言った言葉に逢坂が顔を少ししかめる。何だかさっきから逢坂の反応が母親みたいだ。……本人には伝えない方がいいな。 「結太さ、気づいてる?」 「何に?」 「阿納が絡んでくるのって結太が毎回毎回、律儀に反応を返すからだって」 聞き捨てならないその言葉に、俺は廊下と仲良しこよししていた上半身を勢い良く起こした。 「どういうことだ?!」 「どういうことも何も、結太が反応返すのが面白くてちょっかい出してるだけでしょ彼。俺は基本的にスルーしてるから、一人のときはそんなに絡まれないし」 「まじか……。俺ときどき本気で己の貞操の心配してたわ」 これまで己がしてきたことがまるっきり無意味などころか、逆効果だったことにようやく気がついて頭を抱えた。 「……あ、でもだったらこれからは阿納のこと無視すれば良いんじゃ?」 「無理だと思う」 「ですよねー」 今日のあれで、絶対変な目の付けられ方した気がする。あいつの遊び道具にでもなった気分だ。……遊び道具って何だか響きがエロいな。 「……ってか、さっきのどこで覚えたの」 少しいつもより低めのトーンで逢坂が聞いてくる。……さっきの? あぁ、新しい撃退方法か。 「姫川先輩に教えてもらった」 「姫川先輩って……保険委員の先輩だっけ?」 「そ。あの女子にしか見えない先輩」 姫川 望未(ひめかわ のぞみ)は三年で、俺の所属する保険委員の委員長であり、三年の抱きたいランキングの堂々たる一位。どうしてそんなランキングがあるのかは聞かないでほしい。 「先輩がいざというときのために、って教えてくれたんだけど……そういや先輩笑ってたし、俺はまんまとあの人のいたずらに引っ掛かった訳かこんちくしょう!」 「本当、厄介な人に好かれるよね結太は」 あまりの自分の不運さに、しばらく俺は玄関で考える人ポーズをとり続けた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!