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何度も襖を開けても、何度も歩き回っても、同じ和室が広がっているだけで一向に出口が見当たらなかった。廻は不安な気持ちがの募り、段々と焦りが出ていた。早く、出口を見つけてここから出たい。もしも、逃げようとした事が花喰い鬼に見つかってしまったら、酷い目に遭いそうだと廻は嫌な予感がした。
(早く、出口を探さないと……!)
自然と早足になってしまい、廻の呼吸が乱れてくる。疲労しながらも、しばらく歩き回っていると、和室の窓の外から庭園が見えた。その庭園は、綺麗な雪の様に真っ白な薔薇の花が咲き乱れていた。幻想的な光景に思わず見惚れていると、廻は思いついた。
(窓の外から出られるんじゃ……?)
廻は急ぎ足で、和室にある窓へと駆け寄った。一刻も早く、花喰い鬼に見つかる前に、窓を開けて外へ逃げ出さないといけない。そう強く思い、窓に手を掛けようとした時だった。
「……っ!?」
廻の首に巻きついていた茨と白薔薇の首輪から、鋭い棘が出てきて廻の首をちくりと刺した。痛みは一瞬で大した痛みでは無かったが、次の瞬間、廻の身体が熱くなってしまう。額に汗が滲みでて、艶っぽい吐息を吐いてしまう。その感覚は、最初に花喰い鬼に薄紅色の液体を飲まされた時に沸き上がった情欲と似ていた。誰にも触れていないのに、触れられた様に肌が敏感になってしまい、熱くて苦しい。
(あ、あつい……)
廻は立っていられなくなり、その場に座り込んでしまう。自分で自分の身体を抱きしめながら、身体に篭った熱を逃がそうと深呼吸を繰り返した。早く、この場から去らないといけない。見つかってしまったら大変な事になると思い、廻は身体を這ってでも動かそうとした時だった。
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