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花喰い鬼と、花の涙を零す人が、
時を超えて契りを果たす物語。
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昔々ある小さな集落では、古の時から続いている風習があった。
それは【花喰い鬼】に【生贄】を捧げるという風習だった。
【花喰い鬼】というのは、この集落で遠い昔から恐れ奉られている【鬼】であった。花喰い鬼は、主に茨を自由自在に操ると言われていた。集落をありとあらゆる災厄から守る代償として【生贄】を要求した。ただし、生贄となる人間には条件があった。花喰い鬼に「呪い」をかけられた一族の人間だけしか生贄にはなれない。花喰い鬼に呪いをかけられた人間は、零れ落ちる涙が白薔薇の花びらに変わり、滴り落ちる血が赤薔薇の花びらに変わった。花の涙や花の血を零す人間を喰らう鬼という意味で【花喰い鬼】と呼ばれていた。数年に一度、花喰い鬼は生贄を要求して、集落の村人達は生贄を捧げ続けてきた。
けれど、数年経ったある年に、旅を続けてたまたま集落に立ち寄った一人の僧侶がいた。花喰い鬼を恐れていた集落の村人達は、僧侶に【鬼】を封印する術を教わった。僧侶は集落の村人達に鬼を封じる為の【水晶玉】を与えた。集落の村人達は、昔から恐れ続けていた花喰い鬼を、水晶玉を使用して森の奥深くにある小さな社に、封印したのだった。小さな社の周りには、鋭い棘のついた茨が生え渡った。
こうして、花喰い鬼を封印した集落の村人達は、子供達に対して「小さな社には、決して遊び半分で近付いてはならない」と遠ざけた。時が流れるのと共に、小さな集落の森の奥深くに封印された【花喰い鬼】の存在も、いつしか人々に忘れ去られてしまったのだった。
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