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2花*
花喰い鬼に強く抱きしめられた廻が、次に目を開けた時には景色が変わっていた。畳敷きの和室で様々な小物が置いてあった。襖で閉め切られた広い場所で、真ん中には大きいサイズの布団が敷いてあった。廻が混乱していると、花喰い鬼は乱雑に廻を布団の上に押した。
「……っ!」
茨で手首を縛られて動けない廻は、布団の上にぽすんと倒れてしまう。柔らかい布団が衝撃を和らげてくれたおかげか、身体に痛みは無かった。けれど、この状況はかなりまずいのではないかと思った廻は、慌てて起き上ろうとする。それを阻止するかの様に、花喰い鬼が廻の身体の上に乗り上げると、押し倒してきた。廻を見下ろす紅色の瞳は、ぎらぎらと捕食する獣の様にぎらついて、妖しく欲情の炎を灯していた。
「やだっ……!は、離してっ、ください……っ!」
「お前が泣こうが喚こうか、離してやるつもりはない」
やっと捕まえた美味しい獲物を目の前にするかの様に、花喰い鬼は目を細めて自分の唇を舌で舐める。廻は怯えながら懇願する様に口を開くが、花喰い鬼には届きはしない。花喰い鬼は懐から硝子の小瓶を手に取り、蓋を開けた。硝子の小瓶の中には、薄紅色の液体が入っていて薔薇の花びらが浮かんでいた。そうして、硝子の小瓶を廻の唇にあてる。
「飲め」
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