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「それから……西園寺さんからこれ。もし会うことがあれば渡して欲しいって頼まれてた」
「えっ?」
その名前で思わず跳ねた心臓を落ち着かせながら、差し出された白い封筒を受け取った。
開けて中を見ると、折りたたんだ紙が入っている。
「俺は見てないよ」と手を横に振る兵藤さんに見えないよう、そっとそれを開いた。
“結花ちゃんが羨ましくて少しからかうつもりだったの。なのに引っ越すなんて言い始めるから、どうしたらいいか分からなくなって。ごめんなさい。風間くんにも酷く当たられたわ。私ね、とっくに振られてるの。あのカフェで。風間くん、私のことは家にも入れてくれなかった。前に1度、兵藤くんと無理矢理押しかけた時も迷惑がってたしね。彼はあなたしか見てないのよ。もう少し自信を持って。西園寺瀬奈”
心の端に引っかかっていた不安がそっと取り払われていった。
瀬奈さんはやっぱり、あの夜コーヒーショップで私のことが見えていたんだ……。
自分が辛い時に人に優しくできる瀬奈さんは、やっぱり素敵な人なんだと思う。
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