4.変わっていくもの

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あれから、スローモーションになっていた時計の針は少し速まって、数日が過ぎた。 “彼女役”を引き受けたものの、あの日、涙の打ち合わせを終えて以来風間さんから連絡もなければ会ってもいない。 そもそも、どうして彼女役が必要なんだろう…? 私みたいな平凡な女が彼女役だなんて、風間さんにはなんの得もない気がしてあれは夢だったんじゃないかとさえ思えてしまう。 けれどそれが現実だと実感するのは、美容室での私の立場が微妙なものになってしまったからだ。 あの日、風間さんに手を引かれ美容室のど真ん中を通過してしまったので、それは当然注目されていて、“あの風間さんが”とここでも一瞬でニュースになったらしい。 それからというもの、恵莉さんはわかりやすいほど私のことを無視するようになった。 他の美容師さんたちも、恵莉さんの前では私に関わろうとしない。 マサくんを失ったのと同時に、あの高校時代のように周りの女性に疎まれる日々が始まってしまった。
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