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今日、忽然と一人の同級生が姿を消した。
その生徒の名前は林美琴。私の幼稚園からの同級生でなんだかんだ同じ高校に進学した。決して仲が良かったわけじゃない。私はどちらかと言うとおとなしくまじめなグループで彼女は派手なグループ。いわゆる中心的な人だった。高校生になり校則をかいくぐって化粧をしたり男の子と派手に付き合ったり。別次元にいたけど仲が悪いわけじゃない。時々ノート見せたりする仲だった。
そんな彼女がいなくなった。
そして、それは初めてじゃなかった。
つい一週間前、同じグループの伊藤愛理が、その一週間前に鈴木夢が居なくなった。
担任の先生は今朝、彼女は転校したと言った。そして他の二人の時も転校した、としか告げなかった。
ホームルームが終わり教室内がざわつく。そりゃあそうだ。一か月で三人の転校なんて聞いたことない。そして誰もその話を聞いていなかったんだ。うちのクラスのにぎやかグループの女子は四人。最後に残った津村美津子はありえないと声高に叫んでいる。さすがにおかしいと感じたからか、友達が居なくて不安になったのかは分からない。
「でも、なんか変だよなぁ」
「どうした梨花」
「ん?あ、美織」
特に意味もなく名前を呼べば彼女は椅子の背をまたぐように座って私の机に肘をついた。
彼女は陸上部に所属する私の大親友だ。運動神経抜群、スタイルも良くて気さくな快活な子。男女ともに仲が良くて男子とはもっぱら彼女を通して会話すると言っても過言じゃない。
「いやぁ、美琴ちゃんも転校って変だなぁと思って」
あぁ、それ。彼女は少しトーンを落として言う。そういえば前からあのグループちょっと苦手って言ってたっけ。
「なんかやらかしたんじゃない?」
「なんかって?」
「さぁ」
それよりさ、とすぐに話題が変わってしまった。周りを見ればもうみんな授業の準備を始めていた。騒いでいるのは津村美津子とその仲の良かった男子だけ。まるで当たり前の日常が続いていた。
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