第三章

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「私の事は信じれなくてもいいから、親とか、あとは、仲いい子、石井くんとか。誰でもいいから相談して。話せば落ち着くかもしれないし」  別に仲良くない私の言葉なんて聞いてくれないだろう。そう思ったけど、ゆっくりできるだけ優しい声で語り掛ければ、落ち着いたのか涙をぬぐって息を吐いた。 「本当に、木原さんじゃないの」 「うん。津村さんが何を言ってるのか本当に良くわかんない」  美琴ちゃんが脅されてたなんて知らないし、何故脅されてたのかも知らない。  ハンカチを渡して落ち着くように背中を撫でていれば徐々に嗚咽が収まってきた。真っ赤に腫らした目でこっちを見る。その目は不安げに揺れている。 「誰にも言わないって約束してくれる?」 「ん?まぁ、言わないで、っていうなら」  そういうと彼女は意を決したようにスマートフォンを取り出した。 「ちょっと前にこんなの送られてきて」  それは一見普通のメールの様だった。 『津村美津子様  あなたは、今年の〇月〇日に一人の女子生徒を騙し、三島郁人へ差し出し強姦させお金をもらっていましたね。その行為は、駒崎高校の生徒の安寧を妨げるものとし、我々学校生活保護委員会により粛清されることが決定しました。この事実が世間に明らかにされたくなければ速やかにこの学校から去っていただきたい。期限は今週いっぱい。もし、このまま学校に居座るというのなら相応の社会的処罰が下ることになるでしょう。』 「なに、これ」   スクロールしていけば一枚の写真が添付されていた。そこには肩を抱いてホテルに入ろうとしている男女。 「これ、うちのママ」 「え、じゃあこの男は」 「知らない」  浮気。弱みを握っているということか。こんなのお父さんに知られたら問題になる。 「それより、このメールの内容本当なの」  女子高生を紹介する代わりにお金をもらっていた、なんて。つまり美琴ちゃん達はレイプの被害者じゃなくて加害者だったって言うの。 「ちょっとした出来心だったの。お金ほしくって、女の子連れてくるだけでいいって言われてたんだもん」 「出来心って、何考えてんの?!」 「だってぇ」  頭にかっと血が上る。私何でこの子のこと心配してたんだろう。同じ女なのにレイプされる苦しみが想像できないわけないだろうに。お金とかちょっとした出来心で平気な顔して人の人生を狂わせていたなんて。
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