第三章

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 久しぶりに来た笹木さんの家は駅近くのマンションだった。それなりにお高そうな造りのマンションは笹木さんの家以外に行ったことがなくて未だにドキドキする。 「あら、いつもありがとね」  チャイムを鳴らせば笹木さんによく似た落ち着いた女性が出てきた。彼女のお母さんは私の顔を覚えてくれていつも声をかけてくれる。いつもは一言二言交わして帰るが今日は違う。 「笹木さんに会えませんか」  息をのむお母さんに頭を下げた。断られると思ってた。きっとお母さんなら笹木さんがされたことを知っていると思うし、同級生と会うことで精神的に負担になるなら断ってくれてよかった。 「とりあえず上がって」  笹木さんのお母さんは優しかった。冷たい外から暖房の効いた部屋に入ったからか、笹木さんも誰に対しても優しかったな、なんて思いだしたからか鼻の奥がツンとする。  お母さんはリビングに私を通し、笹木さんの部屋であろう場所に声をかけに行った。コンクールの本番より緊張する。温かい部屋にいるのに握り締めた手は冷たいままで、ここまで来たけど会いたくない気持ちもあった。会って何をしゃべったらいいか、全然思いつかなかった。それなのに、来てしまった。 「梨花ちゃん」  笹木さんのお母さんの声に頭を上げれば手招きしていた。立ち上がって笹木さんの部屋に向かう。一歩が重かった。こういう時に限って脳みそは仕事してくれなかった。  ドアを開けられ中に入れば、少しやせた笹木さんがベットに座ってた。気まずそうに視線は床を見ていてあうことはない。 「笹木さん、ごめん」  勝手に津村さんに聞いてしまったこと。辛い時に何もしてあげれなかったこと。何も知らずにのうのうと生きてたことにさえ罪悪感を感じる。うまく言葉にならなくて、意味わからなかったかもしれない。突然家にまで押しかけてきて謝るとか迷惑かもしれない。それでも、今、謝りたかった。 「木原さんは悪くないよ。だけど、このことは誰にも言わないでくれる」 「勿論、言わない」  言えるわけがない。 「言いたくなかったら言ってほしいんだけど、学校生活保護委員会に依頼した?」
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