第三章

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 ピクリと彼女の肩が揺れる。 「津村さんに脅迫メールが届いたの。学校から居なくならなきゃやったことばらすって」 「委員会から?」  やっと目が合うと彼女は真剣な顔をしていた。 「詳しくは分かっていないんだけど、鈴木さんと伊藤さんと美琴ちゃんが突然転校した」  その名前に顔をこわばらせた。言うべきじゃなかったか。笹木さんにとってはトラウマだろうし会うどころか思い出したくもないだろう。それでも、笹木さんは私を責めなかった。 「転校は何で」 「詳しくはわからないんだけど、津村さんと同じように脅迫されたんだと思う」  彼女に表情はなかった。ただ、ピンク色のカーペットを見ていた。 「彼女たちはどうなったの」 「わかんない。転校してからどこに行ったのか、今何をしているのか全く」  そう、と小さくつぶやいた。 「ごめん、今日はちょっと、一人にしてもらってもいいかな」  たっぷり時間を使って紡がれたのはそんな言葉だった。笹木さんに無理はさせたくないし二つ返事で部屋を出る。早く学校来てね、一緒に部活したいな。他にも、いろいろ言葉が浮かんだけど飲み込んだ。どれを選んでも重荷になる気がして言えなかった。見送ってくれた笹木さんのお母さんは泣きながら、何度もありがとうと言っていた。  笹木さんの家を出て一気に疲れが全身を襲った。体が重いし、寒いのに汗が噴き出す。 大丈夫だったかな。変なこと言ってないかな。傷をえぐったりしてないかな。やっぱり美琴ちゃん達のこと言うべきじゃなかったかな。最後に見た頭を垂れ、ぐったりベットに座る笹木さんの様子が頭から離れなかった。
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