第三章

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 勉強してても、部活してても、やっぱり津村さんのことが頭から離れなかった。突然突っぱねてしまったのは悪い事をしたと思う。だけど、どうしても笹木さんにした酷い仕打ちに怒りが湧いてきて駄目だった。顔を見るだけで嫌な気持ちをぶつけたくなって避けた。すると、いつもは気にならなかった津村さんの様子やポカリと空いた笹木さんの椅子が気になって仕方なかった。今までは目にとめてなかったのに、今度はそこしか見えなくなった。そして見るたびに、重く不快な感情が体の中に渦巻いた。  今週は長かった。こんなに学校が苦しい場所と感じたのは初めてで、辛かった。いじめとか受けている人は毎日こんな感じ、いや、もっと苦しいのかな。そんなの私なら耐えられない。  なんか、嫌だなぁ。やる気も起きなくてベットに寝そべってもやっぱり笹木さんと津村さんの顔が浮かんでしまう。 「お母さん、何か手伝うことある」 「大丈夫なの。休んでていいよ」  お母さんは未だに私の精神状態を心配してくれるけど、正直何もしていない方が考えちゃって辛いから、今は何か動いていたかった。家の下にあるお店に顔を出せばエプロンをして手を洗う。 「無理しなくていいからな」 「大丈夫だよ」  お父さんまで、こんなに心配性だったかな。日曜日の昼時はそれなりにお客さんも多く、また、軽食の注文が出るから忙しい。今はまだ十一時だから本当に混むのはこれからだ。 「代わるよ」  忙しいお母さんに代わって注文票を取る。一番効率がいいのは私がオーダーを取ってお母さんが軽食を作ってお父さんがコーヒーを淹れる、という役割分担だ。すみません、というお客さんの声にはーい、と返事をして頭を切り替えた。
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