第三章

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 結局、気づけば朝だった。考えても答えは出ないし、考えるのをやめようと思ってもできなかった。最終的に私は部外者なのに、なんでこんなに悩んでいるのか苛立たしくなってきて眠れずとても体が重い。 「あ、今日早いね」 「美織、おはよう」  昇降口で偶然会った美織に挨拶すれば顔をしかめられた。私そんなに疲れた顔をしてるのかな。まぁ、実際疲れてるんだけど。わざと明るい声で話せば呆れたように笑うだけで詮索してこない彼女の気遣いに少し心が軽くなった。  教室に近づけば何やらうちのクラスに人だかりができていた。 「なにかな」  肩をすくめる美織に嫌な予感がした。ごめん、通して、と声を上げて人だかりを進む美織の後に続いて教室に入れば異常な空気に包まれた。みんなが立って黒板を見ている。同じ方向に視線を向ければ、信じられないものが映った。  伊藤愛理、鈴木夢、林美琴、津村美津子はレイプ魔に女を紹介して金をもらっていた  この女たちを許していいのか  コピー用紙に書かれた言葉と共に、何十枚もの写真が貼られている。一番近くにあったものを見れば、彼女たちが面白そうに笑っている写真だった。その前にはピントがずれてはっきり見えないものの裸の女性の臀部に男性の下半身がぴったりくっついているとしか見えないものが映っている。 「ちょっと、ツイッターもやばいことになってるよ」  美織に肩を揺らされ覗き込むと短い動画だった。再生すればスマートフォンから流れてきたのは音声をいじったのか変に甲高い女性の悲痛な叫び声と男の煽るような声、そして彼女たちの笑い声だった。何十もの人にリツイートされている。教室内も不穏なざわめきで満ちていた。各々何か囁きあっている。時折、最低、などと聞こえてくるがはっきり何か言える人はいなかった。
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