第三章

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 津村さんは結局転校しなかったんだ。私にだけ分かった。あの脅迫メールが本当なら期限は昨日まで。制裁が下ったのだ。 「うわ」  誰の声だろう。一人がしゃべった途端、音が消えた。その静寂の中教室に入ってきたのは津村さんだった。 「なに、これ」  震える彼女に声をかけるものなどいなかった。仲の良かった石井くんでさえ汚いものを見るような眼で彼女をただ見つめていた。顔を真っ白にさせて頭を抱える彼女をかわいそうだとは思えなかった。  そして、勢いよく教室を出ていって戻ってくることはなかった。  気持ち悪い。  私は加害者でも被害者でもない。ただの同級生で、ただの女子高生だから、私にできることなんて何一つなかった。津村さん達がやったことは許されなくて、でもクラス中に公表することでもない気もするし、いや、でも彼女がしたことは犯罪になるんじゃないか、それなら正式に法にのっとって裁かれるべきだ。そうすればいずればれるし、結果は今と変わらないのかな。たまにしか見ないツイッターを覗けばすごいことになっていた。同級生や同じ学校の人だけじゃない。全く知らない人にも動画は広まり、彼女のなんてことないツイートには罵詈雑言、たくさんのリプライが届いていた。悪口で埋まったスマホ画面を閉じて目を閉じる。学校は休みになった。先生が生徒を無理やり返して、ツイッターによると警察が来て調査しているらしい。  津村さんが自殺したのはその日の夜だった。
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