第四章

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 日常は変わってしまった。一番明るかった彼女たちの姿は消え、そしてしばらくすると笹木さんが戻ってきた。心配するクラスメートに何事もないように笑って、体調を崩していたと言った。彼女のことは誰も知らない。知っているのは私だけだった。 「学校生活保護委員会に依頼したんだ」  その日の部活終わりの帰り道、彼女は話し始めた。 「悔しくて、憎くて、許せなかった。ダメもとだったけど本当に居るんだね。誰だかわからなかったし、ちょっとお金かかったけど頼んでよかった」 「良かった?」  少し前を歩く彼女が振り向いた。彼女は笑っていた。とても冷たい目でニコニコ笑っていた。 「勿論。復習できたし、私の人生は元通りになった」 「でも、津村さんが自殺しちゃったんだよ」  何もそこまで追い詰めなくても、という言葉は口にすることを許されなかった。 「別に死んでほしいなんてお願いしてないよ。勝手に死んだんでしょ?」  足が凍ってしまったかのように動けなかった。またね、と前と変わらない笑顔で彼女が去っていく。寒気が全身を襲ってきてしばらくその場を動くことができなかった。
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