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白い壁の上品な家は有名な企業の会社員であるお父さんに見合ったものだった。そして、ちょっと高飛車で派手な格好やブランド物が好きな彼女にも良く似合っている。
そんな家の玄関前には通学用の自転車が置いてあった。別に自転車に乗らなくても通える距離だが彼女はいつも遅刻ギリギリに自転車を飛ばしていた。
そしてやっぱり家の中に電気はついていない。
「ね、なんか変でしょ」
そういう木村さんの言葉は嘘じゃなかった。電気はついていないが自転車やおばさんが趣味のガーデニングで使うじょうろやホースがそのままになっている。
「ちょっと寄っていってみようかな」
「そうね、心配ね」
心配とは口ばかり、面白そうと目が物語っている。噂好きのおばさんは物怖じしない。
玄関のチャイムを鳴らしてもやはり応答はなかった。
「林さん?いないの。林さん!」
ドンドンと豪快に玄関をたたくが物音一つ返ってくることはなかった。
「いないみたいですし今日は帰ります。何かわかったら教えてもらえませんか」
「もちろんいいわよ。なんだか心配ねぇ」
あら、もうこんな時間、とそそくさと去っていく木村さんを見送ってもう一度美琴ちゃんの家を見上げる。昨日までは上品なお家だと思っていたのに今は廃墟のような寂しさと気味の悪さを感じる。ま、私の先入観が混じった気のせいか。
津村さんに何か聞いてみればよかったかな。
考えるのは明日にしようと家に足を向けた。
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