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指輪と許されぬ恋と、彼と私。
「えへへ」
と、私は誤魔化した。彼からの贈り物、それは、ダイヤの指輪だった。ちょうど私の薬指に合わせたサイズ。一体いつの間に計ったのだろうか。
もちろん、嬉しくないわけはない。少なく見積もっても、100万円は下らないであろうことは、宝石類に特に興味のない私でも見てとれる。もちろん、これが本物のダイヤであればの話だが、彼はイミテーションが大嫌いなのは、先刻承知である。当然正真正銘のダイヤモンドリングであることは明白。
ただ、それを受け取る前に、どうしても確認しておかなければならないことがあった。
「これって……」
一呼吸置いた。
「奥さんと別れたっていう意味よね?」
彼はごくりと唾を飲み込んだ。それだけで私にとっては、返事と言ってよかった。
「それは……」
「もうすぐだからって言いたいんでしょ? 調停ももうすぐ、弁護士にはもうすぐだって言われているからって……もう何年になると思ってるの?」
「次回の調停は来週だ。弁護士の話では次回で絶対に大丈夫だって……」
「だったら、それが終わってから頂戴よ。でないと受け取れない」
「今度こそ……」
「今度とお化けに会ったことがないって、死んだ父が言ってたわ」
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