女の子

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 夜、駅に着いて改札から出ると、ひどい雨になっていた。とてもじゃないが傘なしでは、徒歩10分の道のりを、家まで帰る気にはなれない。周囲を見れば、家族を迎えに来ている車の列で、いつもにはない、ちょっとした混雑ぶりである。俺は、一人暮らしだ。コンビニで傘を買おうとも思ったが、家には既に数本、ビニール傘の在庫がある。その都度買うのはさすがに馬鹿馬鹿しい。今となっては天気予報をおろそかにした、今日の自分が恨めしい限りだ。その時・・・、 「大丈夫だよ、その内止むから」  空を見上げてばかりいて気付かなかったが、俺の横にはいつの間にか、同じく雨宿りをする、小学校低学年ぐらいの女の子が立っている。 「おうちの人、待ってるの?」  とりあえず、声をかけてみると、 「ううん」 「もう、遅い時間だよ、おうちの人呼んで、迎えに来てもらった方がいいって。電話貸そうか?」 「いい」 「遠慮しなくてもいいんだよ」 「止むのを待って、自分で歩いて帰った方が早いもん」 「本当に止むかどうか、分からないじゃん」 「分かるの、あと10分位で、止むって」  不思議な子である。 「・・・ねえ」 「・・・ん?」 「雨が止むまで、お話しようよ。そしたらアッという間だよ」  本当に、不思議な子である。俺はその申し出を、すぐに承諾した。人と話をして過ごすのが、時間をやり過ごすにはもってこいである。それに、気が紛れる。 「じゃあさ、聞いてもいい?」 「どうぞ、何でも」 「大人になるって、楽しい?」  いきなり、すごい質問をぶつけてきた。俺だってまだ、大人の何たるかを分かっている訳ではない。正直、半分ぐらいは子供である。 「・・・どうだろ、どっちかっていうと、楽しいかな、やっぱり」 「そう」
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