解けないのなら溶けてしまいたい

10/14
前へ
/14ページ
次へ
「私、も..。」 「はい? 」 「私....も。就職が、駄目で。内定貰えなくて。周りはもう決まるってるのに、私だけ決まらなくて。焦って、不採用って結果を、見たくなくて。....すがり付いたんです。ブラックだときいていた会社に。」 何で急にこんなことを。 冷静な自分がいる。 でも、無償に彼に話したくなった。 私なんかと違う、私が手に届かない次元の綺麗さを持つ彼が、自分の話をしてくれたからだろうか。 そんなに綺麗じゃない部分の話を。 「なんとかなるだろうって、噂は噂だって。でも、その..予想以上なことばかりで....3ヶ月で、辞めちゃいました。」 「....。」 しんと、静まり返る部屋。 外の騒がしい声が、急に耳に入る。 「あ、あの、すみません..こんな話..。」 「あ、いえ..。その..。」 彼を困らせた。 そりゃあそうだ。 こんな話を急にされたら。 私なら困る。 穴があったら入りたい、を久しぶりに体感した。 「その....てっきり、善田さんのところで働いてるのかと..。」 「え? 」 「あ、お父様の方の善田さんです。打ち合わせさせてもらってる時とか..。いつも、善田さんの仕事場にいらっしゃったので。」 「あ、あれは..お恥ずかしいことに、今はフリーターなので。アルバイトの傍ら、手伝ってる感じです。」 「あぁ、そうだったんですね。」 見ていたんだ。 会話らしい会話なんて、ほとんどしたことなかったのに。 「....父は私を、本職としては働かせてくれません。感性が違うのもありますけど....。厳しさを知っているから、同じ系統の道を辿らせたくないみたいで。私も、無理に行きたいとは思ってないので。」 「凄い..善田さん、素敵ですね。うちは、継げって煩くて。」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加