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「私、も..。」
「はい? 」
「私....も。就職が、駄目で。内定貰えなくて。周りはもう決まるってるのに、私だけ決まらなくて。焦って、不採用って結果を、見たくなくて。....すがり付いたんです。ブラックだときいていた会社に。」
何で急にこんなことを。
冷静な自分がいる。
でも、無償に彼に話したくなった。
私なんかと違う、私が手に届かない次元の綺麗さを持つ彼が、自分の話をしてくれたからだろうか。
そんなに綺麗じゃない部分の話を。
「なんとかなるだろうって、噂は噂だって。でも、その..予想以上なことばかりで....3ヶ月で、辞めちゃいました。」
「....。」
しんと、静まり返る部屋。
外の騒がしい声が、急に耳に入る。
「あ、あの、すみません..こんな話..。」
「あ、いえ..。その..。」
彼を困らせた。
そりゃあそうだ。
こんな話を急にされたら。
私なら困る。
穴があったら入りたい、を久しぶりに体感した。
「その....てっきり、善田さんのところで働いてるのかと..。」
「え? 」
「あ、お父様の方の善田さんです。打ち合わせさせてもらってる時とか..。いつも、善田さんの仕事場にいらっしゃったので。」
「あ、あれは..お恥ずかしいことに、今はフリーターなので。アルバイトの傍ら、手伝ってる感じです。」
「あぁ、そうだったんですね。」
見ていたんだ。
会話らしい会話なんて、ほとんどしたことなかったのに。
「....父は私を、本職としては働かせてくれません。感性が違うのもありますけど....。厳しさを知っているから、同じ系統の道を辿らせたくないみたいで。私も、無理に行きたいとは思ってないので。」
「凄い..善田さん、素敵ですね。うちは、継げって煩くて。」
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