解けないのなら溶けてしまいたい

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「跡継ぎが必要なお家なんですか?」 「酒屋です。田舎の。嫌で、飛び出してきました。」 家を飛び出してきた? この物静かな彼が? 「....思ったより、行動派ですね。」 「戻りたくなくて、先輩の誘いで劇団に入って。この道で行きたいって。幸い、顔だけは悪くないんで。」 私はさらに驚いて、彼を見た。 まさか。そんなに自信をもっていたなんて。 確かに、そんなことを言っても全く嫌味じゃないくらい、整っている。けど。 「....もっと、自信のない方かと思ってました。」 私がそう伝えると、彼は、困り顔で笑った。 「自信、ないですよ。顔くらいしか取り柄がないです。面白いことが言える訳でもないし。気の利いた事もできないし。おまけに、この道で食べていくと決めたはずのものにも、嫌われっぱなしです。昨日の結果然り。」 そういう「自信のない」も、あるのか。 私にとって....たぶん、世間にとっても、彼の「容姿が綺麗」は羨ましい部分だ。 でも、彼は。それよりも、欲しい部分がある。 そこが手に入らなければ、自分に価値が見いだせない。 だから、結局彼も、「自信が無い人」なんだ。 「善田さんの..あ、」 「父の方ですか? 」 「いえ、貴方です。お名前、聞いてもいいですか? お2人とも、同じ苗字で。」 「善田菜花です。」 「..日付みたいですね。」 「7日じゃないですよ? 菜の花って書いて、菜花です。」 「菜の花。素敵ですね。」 そういうと、彼は優しく微笑んでくれる。
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