解けないのなら溶けてしまいたい

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甘い匂い。 息遣い。 サラサラとした黒髪。 大きな目。 「菜花..」 耳元で、優しく名前を呼ばれる。低くて艶やかな声。 彼の頬に触れて。 冷え性の私に、彼の頬は暖かすぎる。 じんとした熱さが、指に伝わる。 「冷たい。」 静かに微笑んだ彼は、私の指を手に取って。 唇に押し当てる。 触れたところから、熱がうつっていくように。 冷えていたはずの手は、じんわり暖かくなる。 彼ほど綺麗な男の人を、私は見たことがない。 まるで、宝石と花を食べて育ったかのような顔立ち。 黒くてサラサラの髪。 大きくて力強いのに、どこか光がない眼。 目を伏せると閉じてるようにすら見える長い睫毛。 薄い唇。 真っ白い肌。 こうして特徴を羅列すると、まるで女の人みたい。 それなのに、今私に覆い被さる彼は、こんなにも力強い。 「ねぇ。」 耳元で囁かれたその声に、私は思わず肩を跳ねさせた。 唇を塞がれる。 2つの唇は、何度も付いたり離れたりを繰り返して、私の思考回路を徐々に麻痺させる。 「口、あけて。」 控えめに口を開ける。 彼は、一瞬微笑んで、また顔を近づける。 ぬるっと口の中に入ってくる彼の舌が、唾液が、なんだか甘ったるい。 上顎を舐められれば、背中にぞくりとした感覚が走った。
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