解けないのなら溶けてしまいたい

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出会ってから、2年が経つ。 初めて会った時は、劇団の売れていない役者さんだった。 私の父は、業界内ではそれなりに名の通ったデザイナーをしている。そんな父は、ツテで赴いた小さな劇団で、偶然彼を見つけた。 彼は、父の服を着て。 1年も経てば、SNSで彼の写真を沢山見るようになった。 出会った時から、綺麗だと思った。 けれど、物静かな青年、というのが第一印象だった。 それなのに。 その言葉遣いも。その仕草も。纏っている、色っぽい空気の出し方も。 どこで覚えてきたの、なんて言いたくなる。 「ん..。」 彼の柔らかい唇は、首筋に落ちる。 優しくてくすぐったい感覚に、思わず声が出てしまう。 首筋に、啄むようなキスをして。たまに、チリっとした痛みを感じるほど強く吸い寄せられる。 彼は、首筋に唇を落とすのを辞めずに、私のボタンに手をかける。 ぷつ、ぷつ、と、1つずつ、ボタンを外される。 ネイビーブルーに、白いレースの入った下着。この前雑誌で、青系の色が好きだって、言ってたから。 私が彼のことを少しだけ思い出しながら買った下着も、結局は片手で簡単にホックを外されてしまう。 ストラップは引き抜かないで、ブラジャーだけを上にずらす。敢えて全部脱がさないのは、彼の性癖なんだろうなって。 何回か身体を重ねれば、それなりに気付いてしまう。 胸元を、彼の前にさらけ出されて。 薄暗い部屋の小さな明かりでも、彼の表情が、一瞬変わったのはわかる。その顔は、ちょっとずるい。 世間では、話題のイケメンとか、注目の俳優とか。 ありふれたキャッチコピーと一緒に騒がれてるくせに。 こんな、なんの取り柄もない女にも興奮してくれる様子に、男の子だな、と改めて感じてしまう。
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