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きっかけは、何だったっけ。
あぁ、そうだ。
彼と初めて出会った時から、半年後。
彼が父の服を着て、人前に出た日。
父曰く、その年は黒が流行で。私には、何が流行りでどこからそういう情報を仕入れるのか、全くわからない。
父の作った服は、黒を基調とした、角度によってキラキラと光る服。
私は初めて見た時、思わず女物のドレスみたいと言ってしまった。父のデザインは、私みたいな凡人には理解し難い。これの何がいいの?とすら思ってしまう。
この服は、着こなすのは無理だろう。だって女物にしか見えないし。
完成した服を父の職場で見た時、そう思った。
でも、当日。
私の予想を裏切って。
彼は、見事に父の服を着こなしてしまった。
まぁ、なにをもって着こなしたと言えるのか、ときかれると、説明するのは難しいけど。
ただ、会場で彼が出てきた時。
私は思わず、息を飲んだ。
女物のドレスみたいだと思っていたのに。
彼が着ることで、それは、彼の男らしさを際立たせる服になっていた。
まるで、彼のためにあるかのような服。
月並みだけど、その言葉が1番しっくりきた。
真っ黒で、照明の角度によってキラキラと光る服は華やかで。
なのに彼の目は、酷く儚げで。
そのアンバランスさに、私はすっかり心を掴まれてしまった。
なんて綺麗な人なんだろう。
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