解けないのなら溶けてしまいたい

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全てのプログラムが終了しても、父はまだ挨拶回りに忙しくて。 私はそんな父に、彼の元へ行くように言い渡された。手には、彼への手土産をもって。 父と同じように、未だ忙しなく動く関係者の人達に挨拶をしながら、私は彼の控え室を探す。 『成瀬 亮太』 その名前を見つけたのは、廊下を1周して、2周目に入ったときだった。 コンコン、と控えめにノックをし、中に入る。 彼はすっかり着替えて、帰り支度をしている所で。 心のどこかで、あの時の彼に会えると期待していたらしい。だから私は、勝手にガッカリしてしまった。今もよく覚えてる。 彼は私の方を、少し怪訝そうな顔で見ていた。 「突然すみません。善田の娘です。父は忙しくて来れないので、代わりに。」 「あ、善田さんの..。」 私の言葉で、やっと思い出してくれたのか。 彼の表情が、少しだけ和らいだ。 お互いにぎこちない会釈をして、私は彼に桜色の紙袋を差し出す。 「父からです。引き受けてくれてありがとう、急に頼んで申し訳ない、と言っていました。」 「そんな..。お気遣いなく。」 今までも、父の仕事で何度か会っていたけれど。 私と彼が2人きりで会話をしたのは、この時が初めてだった。
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