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「料理部だっけ?」
「……ああ」
憮然とする。
自分で決めたこととはいえ、僕がクラスから浮いた理由はこれだ。
仕方ないだろう。やりたくても家でやれる環境がないんだから。
自分の中では色々理由はついていたが、高校生男子に求められているものからは遠いことは分かっていたので、必要以上に言い訳はしない。
しないが、突かれると痛いところにはなった。
「君もどうだ? 確か、帰宅部だったよな」
君ならもてるよ、といったら、笑って返された。
「興味ないなぁ」
「それもそうか」
「大体、岩下君はもててるの?」
「……聞くな」
僕も帰り支度をしながら、ロッカーを開け、袋を取り出す。
「ほら」
「え?」
無造作につき出した紙袋に、彼はきょとんとしていた。
「紙袋、一枚余ってるからやるよ。鞄に入りきらないんだろ」
だから持って帰って食えよ。
そう言った僕に、彼は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ表情を消し、そして嬉しそうに笑っていった。
「ありがとう」
それが、僕と彼との間の、そして彼が生涯最後に交わした言葉だったのだ。
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