その返礼は誰が為に

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話すだけ話して、僕は教室に戻ってきた。 僕に限らず、色々な人間が刑事から話を聞かれたようだった。 彼の友人達は泣きながら、人によっては茫然としながら、とりとめもなく色々なことを話している。 一度もお弁当を持ってきたことがなく、毎日購買で買ったものを食べていたこと。 夕食を家で取る習慣がなさそうだったこと。 一緒に暮らしているはずなのに、彼の会話に両親の影がちらついたことがなかったこと。 彼の家がどこにあるのか、最寄り駅すら誰も知らなかったこと。 そういえば、僕も両親の話は聞いたことがなかった。 確かに高校生ともなると、好んで親の話などしないが、出される食事のこととか買ってもらえるものとか、お小遣いのこととか、怒られること一つ取ったって、何となく話題にはのぼるものだ。 彼には、それがなかった。 単純に共稼ぎで両親が忙しい人だったのかもしれないし、片親でやはり留守がちだったのかもしれない。 だが、亡くなったのが深夜だったのに、最後に会話をしたのが僕だった時点で、彼と家族の縁は薄かったのかもしれなかった。 ぼんやりと話を聞いていると、誰かが僕の横に立った。見ると、同じクラスの男子生徒と女子生徒が二人、青い顔をして僕を見ていた。同じクラスではあるが、名前はうろ覚えだ。あまり親しくはないし、そんなに目立つ生徒でもない。 ちょっといいか、と言われ、怪訝に思いながらも席を立つ。
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