その返礼は誰が為に

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学年はちょっとした騒ぎで、完全に機能がマヒしていた。自習のクラスがほとんどで、一部の生徒は廊下にたむろしている。 そんな一団の横をすり抜けながら、人気のない階段の踊り場までやってきた。 さすがに、少し警戒する。 「……何だよ」 そんなに親しい訳でもない、男子生徒の方が、もごもごと言い訳をしながら、尋ねてきた。 「アイツが死ぬ前に、最後に会ったのが岩下だって聞いて」 「あの、さ」 男の方が頼りにならないと見たのか、女子生徒の方が口を開いた。 「岩下君、彼がこういう包装の箱を持ってたの、見た?」 彼女が出してきた包装紙を見て、僕は首を傾げた。 かなり奇抜な、何となく視線をやってしまいそうな柄の包装紙。 「いいや?」 机の上にもなかったし、彼がほどいた中にもなかった。 僕の返事を聞いて、彼らは心底ほっとしたような顔をした。 「そ、そっかぁ……」 「やっぱりオレらのじゃないんだよ、あいつの飲んだ薬」 「ちょっと待てよ」 僕の出した声に、彼らは怯えたように身を縮めた。しまった、という顔をして、男の方が大きく手を振る。女の方が結局根が強かなのか、一瞬だけ男を馬鹿にしたように睨んで、そして諦めたように神妙な顔を作った。
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