洋菓子店

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洋菓子店

「バレンタインデーですよ、バレンタイン」 「なんですか?そのバレなんとかって?」 「笑えない冗談ですね、まったく」 今朝の従業員とのそんな馬鹿げたやりとりを新田(にった)は一杯料理屋の女将(おかみ)に愚痴っていた。 「ところで、そのバレなんとかっていうのはいったいなんなんです?」 「女将、いい加減にしてくれよ」 新田の(さかずき)に女将は徳利(とっくり)を傾ける。 「バレンタインだよ、バレンタイン」 「ウィスキーの新しい銘柄か何かですか?」 「いやいや、つまらない冗談だな、まったく。バレンタインデーだよ、2月14日の」 女将は馴染みの客の手前、苦笑いを浮かべる。 「新田さんとこの洋菓子店で扱ってるチョコレートとなにか関係でもあるんですか?」 空になった徳利(とっくり)を手酌で傾けて、新田はがっくりとうなだれる。 「もういい、もういい。今夜は帰るわ」
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